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【連載:FTIの米国での活動紹介③】目指すのは、米コミュニティの中でも「魅力的で競争力がある」こと
2022.06.24
株式会社ファストトラックイニシアティブ(以下、FTI)は、2022年4月、総額130億円で3号ファンドの組成を完了しました。また、初の海外投資として米国・バイオスタートアップ2社(セルシウス社、X社 ※社名非公開)に対し、米国トップティアのライフサイエンスVCと協調投資を完了しました。FTIが3号ファンドを通して目指す社会や、先んじて海外投資を行う理由とは…? FTIの代表パートナーである安西智宏とFTIの米国ボストンオフィスで活動する原田泰にインタビューを行い、複数記事にわたる連載形式でまとめていきます。 連載3回目の今回は、米国での活動内容や今後の展望について、引き続き原田に話を聞きました。 |
▶︎連載①:「日本の研究基盤を世界に橋渡し」 FTIが米ボストンに拠点を設立した理由
▶︎連載②:「スタートアップの成功モデル」 日米の違いを肌で感じた2年間
▶︎連載番外編:揺るがぬ“プロ意識”を強みに、日本×グローバル×サイエンスをつなぐためFTIへ(原田のキャリアについてのインタビュー)
▶︎連載番外編:「研究者が研究に没頭できることがイノベーションにつながる」 VCが天職と語る理由(安西のキャリアについてのインタビュー)
活動のクオリティの指標は「どれだけ面白い協業ができるか」
ーーボストンでの活動内容は?
投資や支援の活動に加えて、VCやスタートアップとの関係性構築にも力を入れています。ネットワークとひとくちに言っても、ただ“Say Hi”で終わってしまってはもったいない。大切にしているのは、その後のフォローアップです。持った接点をどれだけ親密にできるか、協業の玉を投げられるかが腕の見せどころだと思っています。
VCに対しては「この人たちはどういうことができるのだろう」と考え、スタートアップに対しては「この人たちのために自分はどういうことができるのだろう」と考えます。出会った人たちに、自分が尽力できることを考えていく中で、協調案件や投資案件がでてきます。その中でどれだけ面白く興味深い協業ができるかということが活動のクオリティの指標と考えているため、それをいかに上げるかを意識しています。
また、投資先の支援も行っています。例えば、先日、米サードロックベンチャーズと共同で投資実行した米セルシウス・セラピューティクス。日本に進出したい・日本の事業パートナーを見つけたいという意志を持つ企業の活動をサポートしています。
さらには、日本の投資先のアメリカでのネットワーク探しのお手伝いをすることもあります。アメリカでのネットワークも広がってきているので、それを日本の投資先に還元したいという思いがあります。今はまだ一部ですが、今後より支援の幅を広げたいと思っています。
普通のことをしていても新参者、No oneであるだけ
ーー日本オフィスとの連携はどうしている?
ミーティングは毎日のように密に行っています。大事な意思決定を行う際はともに考えます。場所は離れていますが、何が起こっているのかをお互いに理解し合うことや、情報のやりとりを密に行うことは重要だと考えています。とくにFTIの米国での活動ははじまったばかりで、普通のことをしていても新参者であるだけ、No oneなんです。そこからどう米企業に振り向いてもらえるか、米VCコミュニティの中で存在感を出せるかが、活動の肝になってきます。
私としては、日本とのコネクションがあるという強みを最大限に生かし、日本から何を持ってきたら彼らが興味を持ってくれるかということを常に考えています。
自分達の話が“刺さる人”を見分けることが大事
ーー日本の良さをどう伝えている?
私のキャリアについて話した際、「日本が期待されていないのがショックだった」ということをお話しました。そんな雰囲気の中で、日本とのコネクションを売りにするためには、どう日本を語るかが重要になってきます。
私が考える日本の良さは、「基礎科学の質が高い」こと。バックにあるデータの質、再現性が高いことだと考えています。しかし、表面的にそういうことを伝えても正直、相手が腹落ちしてくれることはあまりありません。
そこでどう腹落ちさせるかというと、自分達が相手の“信用に足る”ということがとても大事なんです。信頼を勝ち取る。自分達がアメリカのエコシステムの中で存在感があり、「この人たちと一緒にやったら面白いことができそう」という期待感やワクワク感をいかに感じてもらえるかということ。ロジカルな話だけでは伝わらないものがあります。
また、何を言うかより「誰が言うか」が大切であるとも感じています。ハマる・ハマらない、とっつきやすい・とっつきにくいというのは相性の問題でもあるのですが、自分達の話が刺さるかどうかを見分けることも大事です。
アメリカの中でも魅力的かつ競争力があること
ーー米国での活動について、今後の展望は?
日本の良いところをアメリカに持ち込むという、日本視点の発想だけだとうまくいかないと考えています。あくまでも視点はアメリカに置き、アメリカの中でどう成功できるかが鍵です。自らの強みを使わないといけないのは大前提ですが、目線は米コミュニティで「良い」と言われるような投資や投資先支援の活動を成功させることです。
技術を日本から持ってくること自体は、とても強みになります。案件組成、質の高いネットワークを持つこと、組織構築…など、アメリカの中でも魅力的かつ競争力のある組織であること。「日本からやってきているよね」だけではなく、アメリカのプレイヤーとして見てもユニークで、一流。質に妥協のないプレーをすること。それを念頭に、日本の良さを取り込みながら活動していきたいと思っています。